デザインは作品づくりではない!デザインディレクションの真意に迫る【ディレアカVol.6 レポート】

デザインをちゃんとディレクションしよう!アートディレクターが語るデザイン・マネジメント

こんにちは!ディレ協協会員のはっとりです!
だいぶ遅くなってしまいましたが、11月21日に行われたディレアカセミナー「デザインをちゃんとディレクションしよう!アートディレクターが語るデザイン・マネジメント」の事後レポートをお届けします!!

講師は、雑誌(MONOCLE、CasaBRUTUS、WIREDなど)やWEB、広告、プロダクトデザインなど多方面で活動されているデザイナーでありアートディレクターの徳間貴志さん。
第一線で活躍する徳間さんにデザインとは?そして、デザインディレクションとは?ということについてお話頂きました。

講義内容

前半は「デザインするとは何なのか?」という内容について。
簡単に講義頂いた内容のエッセンスをご紹介します。

「デザイン」の要はヒアリング

「橋のデザイン」を考えるな。「河の渡り方」を考えよ。

という有名な一節がありますが、実は”河の渡り方”を考えるのもちょっと違います。
”なぜ橋が必要なのか”を考えることが一番大事だと、最初に徳間さんは説かれました。

クライアントは「河を渡りたい」とはヒトコトも話していない、「橋=渡るモノ」という”一般常識”または”作り手の解釈”で考えてはいけない。
つまりは、ディレクターやデザイナーが勝手な解釈でデザインの目的を決めてはいけないということです。

「WEBサイトのメインビジュアルを考えてほしい」と言われた時に「キャンペーンをPRしたいのだな」と勝手に解釈して「メインビジュアルを変える以外にもこんなPR方法がありますよ」などと提案してしまうのはお門違い。一方で「どんなデザインにしましょうか?」聞くだけではただのオペレーターになってしまう。もちろんデザインのクオリティを維持するオペレーターの立場はとても大切なポジション。けれども、アートディレクターを目指すのであれば言われたことを形にするだけでは足らない。一番必要なのは「なぜメインビジュアルを変えたいのか?」ということを徹底的にヒアリングすること。

クライアントは「目的のための手段」を依頼してくる場合が多いが、依頼内容が「目的」なのか、「手段」なのかを見極めることが大切。う~んなるほど、いきなり核心で勉強になります。
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「デザイン」することで「問題解決」をする

デザインは「お客様からの依頼ですること」「サイトを制作するためにすること」のようになってしまっています。でも、本当はその依頼や制作背景には「売上を上げたい」「これまでとは違う層のユーザーに訴求したい」「ブランディングしたい」等、何か実現したいことや抱えている問題があるはずです。
その問題を掘り下げ、解決するためにデザインしなければいけない。
「私はデザインをするとき、問題を見つけるために、ヒアリングして洞察を深め、考えて計画を立て、プロトタイピングすることで表現して完成品を作ることによって解決しています。デザインには必ずこのような流れが必要です。」と示されたのが以下のようなフロー図。
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「デザイナーはお医者さんに似ています。」と表現される徳間さん。
お医者さんはどこの具合が悪いんですか?と患者さんに聞いて診察して薬を出す。
デザイナーもお客さんに徹底的にヒアリングをして、考えて、デザインして問題解決をする。たしかに、その流れはとても似ていると感じます。

Q&A

後半は事前に参加者から集めた質問への一問一答+解説という形で講義が進みました。
ここではその中から抜粋したいくつかの質問をご紹介します。

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Q.クライアントが満足するWebディレクターとデザイナーのチームとはどのようなものか?

「どんどんアイデアを思いつくデザイナーとそのアイデアをプロジェクトの条件下で実現可能かどうかの判断を即座に言えるWebディレクター。打合せが盛り上がる。クライアントのテンションも上がる。もしかしたら追加予算も上がるかもしれない。
役割分担は明確にした方がいい。ディレクターが一緒になって風呂敷広げちゃうと大変。」

――たしかに、ついつい盛り上がって広がっちゃう時ってありますね。反省です。。。。

Q.デザインをマネジメントするために、Webディレクターはデザイナーとどう向き合うべきか。

パターン1:
ディレクターがデザイナーになれば良い。
もしくは
デザイナーがディレクター的な視点を持てば良い。

一緒に体験・体感を共有することも大事ですよね。
そしてやりとりは口頭や対面で行うことも意識した方が良い。

パターン2:
デザインをヒアリングしてデザイナーに常に説明させると良い、
実際、説明が出来ない部分は、デザインの詰めも甘く、クライアントへ不安が伝わる。

アートディレクターを目指すデザイナーのスキルアップ、オペレーターではなくデザイナーであるためにも必要。

――デザイナーに自分のデザインを説明してもらうっていうのはいいですね。早速実践!

Q.デザイナーに本来何を期待すべきなのか?

問題点の明確化 そして 解決方法の提示。

Q.デザインのためのコンセプトの作り方やコンセプトからデザインへの落とし込み方、デザインを想像通りのものにするための、ディレクション方法を教えてください。

コンセプトの作成からデザイナーを参加させる。
施策部分や情報整理は先にディレクターがやっていく。

Q.デザイナーのやりたい仕事のやり方とディレクターのやりたい仕事のやり方が異なる場合、どのように折り合いをつければよいのか?

嫁姑問題!?(笑)
直接、腹を割って話して下さい。

――まったくです。お酒でも飲みながら腹を割って話すしかないですね。(苦笑)

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この他にもたくさんのQにお答え頂きました。
全体を通して感じたのは「デザイナーの役割」と「ディレクターの役割」が実は重複する部分が多いということ。
ディレクターはヒアリングして要件を聞いてくる人、デザイナーは要件に沿ってデザインする人、ではなく、デザイナーももっとコンセプトづくりなどの上流工程に関わっていき、ディレクターとデザイナーが一緒になって解決すべき問題を模索する、という体制が理想なのだと学びました。

質疑応答

さらに、その場で参加者からの質疑応答タイム。

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Q.どのようなクライアントがいいですか?指定がとても細かい方がよいか、ふわっとしている方がよいのか。

どちらでもいいです。
指定が細かすぎると「僕はオペレーターじゃないんで」となりますが、ある程度制約があると、その条件下でどのようなデザインにするかという工夫をしたくなります。

デザイナーはアーティストではないのですごい作品を1個作ることが仕事ではない。
選択することが仕事です。

Q.ヒアリング以外に行っている洞察を深める手段はありますか?

似たようなサイトを見るであるとか、お客様の商品知識を身に付けるであるとか。
そのWEBを使う時のシチュエーション想定、ターゲットの人が一番見るのはどこなのか、などか考えます。

Q.デザイナーから見たディレクターの役割と価値は何でしょうか?

情報の優先順位を整理していくれること。決定してくれること。
そして、できること・できないことを明確にしてくれることですね。

今回はデザイナー、ディレクター、発注側の方と様々な立場の方が受講されており、質問の内容も多岐に渡っていたことが印象的でした。
どの立場の方も”デザインディレクション”という共通の悩みを抱えている中で、今回の講義では大きな気づきを得られていたようで、その気づきからさらに一歩踏み込んだ質問内容が寄せられていました。

ミートアップ

最後は徳間さんを囲んでミートアップ。
いつもはワークショップで一緒のグループになった人と話すなど参加者同士の交流が中心のミートアップなのですが、今回はワークショップがなく、ミートアップ参加者も少なめだったため、自然と徳間さんを囲んだ座談会のような空間に。
講義では質問しきれなかったことや実際の案件の裏話など、ここでしか聞けないお話をたくさん聞くことができ、いつもとは一味違ったとてもアットホームなミートアップになりました。

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まとめ

今回、一番印象的だったのは「デザインは問題解決をすること」という言葉。
日々多くの案件のディレクションをしていると、ついつい「クライアントから依頼されたデザインを完成させること」に精一杯になり、ヒアリングの際も”デザイン要件を漏れなく聞く”ということに終始してしまいがちです。
しかし、どんなに要件を事細かに聞いてもクライアントが抱えている問題が何か分からなければそのデザインの役割は分からず、もちろんクライアント側も「デザインによって問題解決する」という発想がないために好みのデザインを突き詰めることがゴールになり、結果、両者で迷走する。。。
という過去の痛い経験を思い起こしました…orz
ディレクターとデザイナーが問題を掘り起こし、解決に向けて誘導するということこそデザインディレクションに必要なことなのですね。

さらにもう一つ。
本セミナーの中で、言われた通りのデザインを作る”オペレーター”デザイナーの話が出ましたが、それはデザイナー側の問題だけではないように思いました。
ディレクターの仕事のやり方が結果的に”オペレーター”デザイナーを作り出してしまっていることもあるのではないか?とこれまた反省。
あくまで”デザインディレクション”の話なので同じチームのデザイナーが”オペレーター”になってしまわないようにディレクターがコミュニケーションをとっていくことも大事ですよね。

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この記事を書いた人

服部 麻優