結婚・出産しても続けたい!WEB業界の女性の働き方(後編)

こんにちは、日本ディレクション協会 広報部の吉田です。

11月21日(土)に開催された「結婚・出産しても続けたい!web業界の女性の働き方」のイベントレポート(後編)をお届けします。

前編では株式会社ヘノブファクトリー代表の谷脇さんと株式会社シンクスマイルの辻さんが話してくれました。

そして後編では、谷脇さん・辻さんだけでなくWeb業界で働いている女性やパパディレクターなども加わり、女性の働き方や結婚・出産をテーマにトークセッションをしました。

パパ、ママ、独身、既婚。いろんな視点からトークセッションしました

04_登壇者写真

トークセッションは次の5名で話しました。

(写真左から)

  • 合司さん:ディレ協。ベテランディレクターで2児のパパ
  • 辻さん :シンクスマイルさんの社員。20半ばのできる系女子
  • 谷脇さん:ヘノブファクトリー代表。1児のママ
  • 村瀬さん:ヘノブファクトリー取締役。第一子妊娠中
  • 篠崎さん:クリーク・アンド・リバー社のキャリア女子 ※司会のため写真に入らず

なかなか普段このような形で他の人の意見を聞く機会がないので、全部ご紹介したいのですが、長くなってしまうので内容に絞ってご紹介したいと思います。

出産で長期休暇をする時にすべき準備とは

ヘノブファクトリーの村瀬さんは、現在妊娠中で、家と職場で半々に仕事できるよう移行中とのこと。出産のため職場を離れることについて、質問が集まりました。

──村瀬さん、これから仕事を休むことに不安はないですか?

村瀬さん村瀬さん:今は谷脇さんに先輩ママの視点から、必要な準備について教わっているところなんです。まず、仕事の上では自分がいなくても回るように、マニュアル化を進めています。そして、自分がいなくなっても職場が緊張感を保てるよう、意識して周りと接しています。

後輩のこれからのためにも、働く女性のモデルケースを作りたいんです。個人の問題としては、やっぱり、絶対的に仕事ができない時間ができてしまうことは不安です…。

谷脇さん谷脇さん:出産した後はすごーく赤ちゃんに気持ちを持ってかれます。私ですら仕事がどうでもよくなっちゃったんですよね(笑)。バランスよく働こうって頭が切り替わるかもしれませんね。

村瀬さん村瀬さん:主人の会社は、結婚した女性は退社する社風なんです。子育てする女性が働けるには、男女ともに考慮する必要があるので、ヘノブでは、男女関係なく子供の様子を見れるように制度を整えていきたいです。

この問題はママだけのものじゃない。パパ視点での提言

唯一の男性スピーカー、2児のパパの合志さんから、会社のしくみを作ることの難しさを感じた体験談が出ました。

合志さん合志さん:僕は、当時在籍していた会社のパパ1号だったんです。だから、自分を含め会社の誰もが、その時が来るまで何が起こるか想像できなかった。大変でした。

さらに、1人目の時も大変だったけど、もっと大変だったのが2人目の時です。自分が1人目の面倒を見なきゃいけないから、抱えている仕事がまるまるストップしてしまいました。

谷脇さん谷脇さん:やっぱり、会社に前例がないとみんなわからないですよね。悪気があるとかじゃなくて…。だから、社員の方からもそういう空気を作っていかなければ変わらないんじゃないでしょうか。

子育て制度は「女性のための」と捉えられがちですが、そのようなしくみが整わなければ結局、男性側の仕事にも支障が生じます。谷脇さんは、女性だけではなく、将来のパパである男性側からもうまくいくよう働きかけが必要と自身の経験から実感されてました。

性善説と信頼で在宅メンバーを活かす方法とは

ヘノブファクトリーさんでは、半在宅・在宅のパパママが複数活躍しています。在宅スタッフに対しては性善説で考え、あえて信頼をベースに関係を築いているそうです。席を立つ時間を細かくチェックして労働時間をはかったりしない、あくまで頼んだものをちゃんと上げてもらうなど、成果で評価する。

これに対して、会場の経営層の方より質問がありました。

──管理ではなく信頼ということですが、どのくらいからそういう働き方を任せられるか、明確に決まってるんですか?

谷脇さん谷脇さん:ヘノブファクトリーではメンバーに対して、技術を身に付けるだけじゃなくて会社の風土や空気を学ぶところからやってもらうんです。

たとえば、1年目の子には事務の入力の仕事を平等にやらせて、会社の内情をわかってもらうとか。大変だけど複数の役割を与えていって、それらを重ねて信頼関係を築いていきます。

それで、スピードとかマネジメント力とか自己管理とか、そういうものがこのくらいなら在宅大丈夫だなって人には信頼を前提に在宅で仕事をしてもらいます。

在宅で仕事をする人から、能力を奪ってはならない。権限を持たせずに外に出し、任せられる仕事だけ任せるということは、スキルを伸ばす機会を奪うということで、それはよくない!と思ってます。

時短勤務は会社をどう変える?その成功と失敗

クリーク・アンド・リバー社 篠崎さんより、時短勤務の女性が会社に与えるメリットについて意見がありました。

篠崎さん篠崎さん::うちは300名くらいの会社で、上場もしています。仕事を紹介している自分たちがブラックってわけにもいかないので(笑)ここ数年で制度が整ってきました。

時短のママもたくさん働いてます。やはり子供がいると、仕事が第一ではなくなりますよね。でもその分、ママたちは「16時までに絶対帰る!」と決めて限られた時間をプライドをもってしっかり仕事をするので、周りにすごくいい影響を与えています。

クリーク・アンド・リバー社は、時短勤務制度がすごくうまくいった例なんでしょう。反面、もちろんうまくいかなくなった例もあります。というわけで、話題は「資生堂ショック」へ。

※資生堂ショックとは・・・2015年11月、日本国内ではいち早く働く女性の就労環境を整えてきた資生堂が、子育て中の女性社員にも平等なシフトやノルマを与える制度を発表。このことをメディアやネットは批判的に報じ、AERAが「資生堂ショック」と紹介したことで話題になった。

合志さん合志さん:あの問題は単に資生堂が酷いってことじゃないんです。時短勤務のスタッフがフルタイムの人に配慮を見せず帰るなど、社内で摩擦が生じ、むしろ内部で不公平感を批判する声に押された制度改革だという話がありますよね。実際に業績も落ちてましたし。

谷脇さん谷脇さん:こういう問題が表面化する前に上の人たちが予想をして、リスクを避けられなかったのかなと思いますよね。資生堂のような大きな会社だと、どうリスクヘッジをすればよかったのかなと考えます。

この問題に対し、会場からも「既婚でも子供がいなくてフルタイムで働いている立場からすると、やはり時短のしわ寄せがくるとなんで自分が?って思ってしまう」という意見がありました。

まず制度よりも、社内で信頼関係の構築がないと解決しないってことなのではないでしょうか。

女性が将来を考えた時の選択肢

最後に、私も一番気になっていた、会場より質問があったこの話題でした。

──1人の女性、1人の社員が働き方の岐路に立った時、どんな道があるんでしょうか。

村瀬さん村瀬さん:私は経営側に立つという道しか考えてなくて、会社に残ったから…どうなんでしょう。自分の会社に利用できる制度がなかったら、転職するのもありなんでしょうか?

合志さん合志さん:ありかもしれないけど、WEB業界でしっかり制度が整ったところって、まだそんなになさそうですよね。それを考えると、別業界でWEB担当として就職する方が可能性があるかもしれません。

まだ結婚による時間制限などを考えていない辻さんは、どう思いますか?

辻さん辻さん:今の仕事はすごくやりがいがありますが、女性のための制度となると、自分ひとりで変えがたいと思うこともすごく多いです。会社は、今まさに成長中ですし…。

いつか自分にそれが来た時に、「あなたのために制度を作る」って言ってもらえるような社員になっていたいなと思います。

合志さん合志さん:リスクのある転職に踏み切るよりは、すでに勝手がわかっている今の会社を続け、状況が変わっても自分に何が求められているか考えて働き続けるのも、そんなに悪いことではなさそうですよね。

谷脇さん谷脇さん:単純な労働時間だけで評価される状態下だと、時短勤務はやりづらいですよね。

先ほど資生堂ショックの話で、時短勤務の人が増えて業績が下がったって話がありましたが、じゃあなんで業績が悪くなるの?というところを考えるとお金の仕組みを考える人が少なくなってしまったからだと思うんですね。

業績に対して目標を持てる人を増やし、自分や他人のやっていることがどうお金になるかということを考えられる人が増えれば、全体がうまく動きます。単純に時間だけでなく、そういう面まで評価できるといいですね。

まとめ

今回のイベントは登壇者・参加者のお子さんも参加され、ミートアップもいつも以上ににぎやか。子供たちも元気すぎてビックリしました(笑)

普段のWEB勉強会では触れられない視点に触れられた本イベントですが、改めて女性の働き方を考え直すいい機会になりました。

単純に「これをやっておけば大丈夫!」みたいな解決策はない。

けど、社員一人ひとりが会社のあるべき働き方や、自分が周りに与える影響が積み重なって・・・少しづつ女性の働き方が変わっていくんだと思います。

女性をとりまく働き方は、個人としてもディレ協メンバーとしても、このテーマでもっともっと切り込んでいきたいと思いました。興味をお持ちの方はぜひ、ディレ協のイベントへご参加ください!

この記事を書いた人

吉田 菜美子